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傾斜地と道路高さ制限の天空率

傾斜地と道路高さ制限の天空率


『道路高さ制限』は、一般的に「道路斜線」と呼ばれています。

これは、「道路の反対側までの距離に 建築基準法別表第3 で規定されている数値(勾配)を掛けて求めた高さを越えて建築してはいけない。」、 という内容に起因します。

建築物の高さの制限する起点は道路中心の高さです。
(道路が1m以上低い場合は緩和されます。)

道路からの「離れ」に比例して、建築物を高くできるなるため 「斜線」と呼ばれていますが、正しくは『道路高さ制限』といいます。

現在『道路高さ制限』は、『天空率』によって緩和でき、 事実上『道路高さ制限』を適用除外することが可能です。

平坦な敷地の場合は比較的簡単な作業なのですが、傾斜地となるとどうでしょうか。

建築基準法 および 建築基準法施行令 の中では、『隣地高さ制限』や『北側高さ制限』を天空率で緩和する場合については 「『高低差区分区域ごとの部分ごと』に緩和する。」と記されていますが、 『道路高さ制限』を天空率で緩和する場合については『高低差区分区域ごと・・・』 の一文は記されていません。

条文に記されていないということは、 『道路高さ制限』を天空率で緩和する場合は 地盤面ごとに考えることは必要ない?のでしょうか。
実のところ、道路高さ制限に地盤面ごとの考慮がないのと同様、天空率にもありません。

簡単な傾斜地を例に、「傾斜地と道路高さ制限の天空率」 の関係を考えてみたいと思います。


●用語の定義

まず最初に、建築基準法の用語と用語が定義・引用されている条文を確認しておきましょう。

用語 引用条文 解説
地盤面 令2条第1項第6号
令2条第2項
法56条(高さ制限・天空率)を適用する際の高さの基準。
傾斜地での3mを超える場合については令2条第2項で定義しています。
下記の『平均地盤面』とは別に定義されています。
平均地盤面 法別表第4欄外
令135条の12
法56条の2(日影規制)を適用する際の高さの基準。
上記の『地盤面』とは別に定義されています。
地面 令2条
法別表第4欄外
実際の敷地の形状、起伏面。
『地盤面』や『平均地盤面』を求める際に必要です。
高さ適合建築物 令135条の6
令135条の7
令135条の8
法56条第1項から第6項(高さ制限)を適用した建築物のこと。
ちなみに同条第7項で天空率を定義しています。
天空率での緩和を使う上で、計画建築物よりも先に設計しておかなければならい建築物です。
道路の反対側の境界線 法56第1項
令135条の9
道路高さ制限のかかる範囲。
天空率を算定する位置の両端。
敷地を区分した区域 令135条の6
令135条の7
令135条の8
法56条第7項(天空率)を用いる際、敷地内を以下のルールに従いに区分します。
・道路高さ制限勾配の違う区域等
令132条または令134条第2項で区分される区域
・高低差区分区域

ご存知のように、傾斜地の建築物の接地高さが3mを越える場合は3m以内ごとに平均の高さを設け、地盤面ごとの建築物の部分の高さの基準とします。

この建築物の高さの基準を、一般に『平均地盤面』などと呼んでいますが、正しくは『平均地盤面』とは法56条の2法別表第4欄外)に用いられる用語で、法56条内では単に『地盤面』と呼んでいます。


●物件概要

今回、問題とする傾斜地は下図のような敷地とします。

用途地域は商業地域、敷地内の勾配は0mから5mで一定勾配、道路幅員は一定としています。


●まずは、道路斜線で

まずは、道路高さ制限を用いて計画建築物を計画することから考えてみましょう。

傾斜地で道路高さ制限を用いる場合は、計画建築物の高さを制限する基準を求める必要があります。

この計画建築物の高さの基準を『地盤面』と言い、計画建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面(令2条第1項6号および令2条第2項)とします。

下図で、計画建築物(灰色)の接地高さ(赤部)の平均の高さを求めてみましょう。

(1m+1m+4m+4m)÷4頂点=2.5m
※実作業では「計画建築物の部分の接地面積の合計を計画建築物の部分の周長で割る。」などの方法で求めます。

計算の結果、2.5mの地盤面(青部)となり、敷地内高低差は水平な単一の地盤面にモデル化されました。

ただし、この計画建築物の周囲の地面と接する位置の平均の高さは3mの高低差を越えていないので(1m〜4m)、地盤面は唯一となります。


●道路斜線をチェックする

計画建築物の高さの基準が決まったので、道路高さ制限をチェックしてみます。

前面道路の中心高さは0mです。

地盤面と道路中心との高低差が2.5mもあるので、令135条の2を適用します。(1m以内の高低差は緩和されません。)

令135条の2第1項文末『・・・とみなす。』とあることから、道路中心の高さは1mを減じたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなさなければなりません。
令135条の2第2項の『・・・行政庁は、・・・』により、この高低差緩和を適用しないケースもあるようです。)

(2.5m−1m)÷2=0.75m

結果、この計画建築物は道路高さ制限をクリアしていました。

道路に勾配がある場合(坂道)も同様に、緩和した高さから道路高さ制限をかけていきます。


●「天空率」使ったら?

では、上図の計画建築物に天空率による緩和を適用し、さらに計画建築物の建築高さを稼ぐには、どのようにしたら良いのでしょうか。

それには、まず『敷地を区分した区域』を作らなければなりません。

道路高さ制限を、天空率により緩和する場合の『区分区域』は、令135条の6で規定されており、『道路高さ制限の勾配の違う区域等』と『令132条または令134条第2項により区分される区域』でしか区分することができません。(『高低差区分区域ごとの部分ごと』とは記されていません。)

今回の敷地は商業地域単一ですので道路斜線の勾配は一定です。
また、道路幅員も一定で令132条令134条第2項は適用されません。
『高低差区分区域』は存在しますが、令135条の6には適用する内容は記されていません。

そのため、今回の傾斜地の地盤面は一体として扱い、道路高さ制限適合建築物や計画建築物を区分区域で区切らない(地盤面ごとではない)必要があります。


●適合建築物を造ってはみたが・・・

さて、区分区域内に道路高さ適合建築物を造ってみました。

 

道路高さ制限適合建築物(上図灰色)は道路高さ制限内で自由に設計できます。

左図は道路高さ適合建築物の形状から求めた地盤面をもとに道路高さ適合建築物を造りました。

右図は計画建築物の地盤面をもとに道路高さ適合建築物を造りました。

計画建築物と道路高さ適合建築物とで地盤面の高さや平面的な位置が異なってしまいました。

では、どちらの道路高さ適合建築物を使って天空率を比較すれば良いのでしょうか?


●地盤面はどちらを使う?

2.5mの地盤面は、計画建築物が道路高さ制限を受ける場合の高さの基準です。

令2条第2項や令135条の2で規定されている『地盤面』は、『高さを制限をするための基準』です。

道路高さ制限を天空率によって緩和(適用除外)された計画建築物には、道路高さ制限の高さの基準が存在しません。(実際は2.5mです。05/12/14追記)

よって、傾斜地での道路高さ制限を天空率により緩和する場合は、道路高さ適合建築物の地盤面を用いて天空率の比較計算を行う必要があります。ことも可能です。(05/12/14変更)

 

また、地盤面を複数に取った場合、道路高さ制限では『高低差区分区域ごとの部分ごと』で天空率を算定することが規定されていないので、道路高さ制限適合建築物を一体で天空率を算定することになります。(当然、比較対象の計画建築物も一体で天空率を算定します。)

ここで再び問題が発生します。

『道路高さ制限適合建築物と計画建築物は一体で天空率を比較するとして、天空率を算定する位置はどちらの地盤面を基準にするか?』


●緩和は使わなくてもいい?

道路高さ制限を天空率で緩和する場合の算定する位置は令135条の9に記してあり、その4項では道路高さ制限と同様に高低差による緩和を使わなければならない、となっています。(道路斜線とは違い、『・・・行政庁は・・・』の一文はありません。)

高さ制限での壁面線の後退距離による緩和や2Aかつ35mの道路幅員の緩和、道路が低い場合の1mを減いた1/2の高低差緩和などは法56条第6項に起因します。

法56条第6項では、
『建築物の敷地が2以上の道路に接し、又は公園、広場、川若しくは海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する道路若しくは隣地との高低の差が著しい場合その他特別の事情がある場合における前各項の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。』
と記されています。

しかし、「天空率」は法56条第7項であり、「前各項・・・」ではありません。
(替わりと言ってはなんですが、令135条の9第5項で、道路高さ制限と同様でない旨をわざわざ記してあります。05/12/14追記)

したがって、高さ制限では緩和規定であっても、天空率(法56条第7項)には適用されません。

一般的に、2Aかつ35mや道路が低い場合の1mを減いた1/2などは緩和と捉え、「適用しなくても良い。」、とすることも可能ですが、法56条第7項では政令として令135条の6第3項や令135条の9第4項などで別途規定しています。

よって、令135条の9第1項第1号にある『当該建築物の敷地の前面道路に面する部分の両端から最も近い当該前面道路の反対側の境界線上の位置』で算定するのですから、下図のように面する部分(オレンジ色の線上)が算定位置となります。

また、算定する位置の高さは、令135条の9第1項第1号の冒頭『当該建築物の・・・』とあり、暗に計画建築物の地盤面を基準にする旨が謳われています。(05/12/14追記)

さらに、令135条の9第1項第2号の規定により、『当該位置の間の境界線上に当該前面道路の幅員の2分の1以内の間隔で均等に配置した位置』で天空率を算定します。(黄色丸印)

ここで、「算定する位置は道路高さ制限建築物の地盤面ごとでは?(下図)」という疑問も浮かんできます。


●算定する位置は地盤面ごと?

運用上、地盤面ごとの方が算定位置が重ならず煩雑になりにくいのですが、地盤面ごとの道路に面する位置で算定位置を取れない反証が存在します。

■反証その1

上図では道路高さ制限適合建築物の地盤面が敷地より小さい場合、算定位置が敷地の面する位置よりも短くなります。(05/12/14変更)

これは令135条の9に規定されている『敷地の前面道路に面する部分』が途中で止まってしまっていることにもなります。

高低差区分区域ごとの地盤面ごとに算定する位置の両端を決める場合、必ず敷地全体を区分していなければならないことになりますが、地盤面の位置や広さについての規定はないので(建築物の外周という規定はあります。)、設計者が『前面道路に面する部分』よりも狭い(小さい)地盤面を設定することも考えられます。

■反証その2

上でもお話ししたように、天空率を算定する位置の高さは計画建築物の地盤面で決定します。

仮に、下図のように敷地の両端にしか高さ制限適合建築物を設計しなかった場合、敷地内の建築物のない部分の地盤面の高さは「不定」になります。

そのような場合、天空率を算定する位置の高さも「不定」になります。

計画建築物の地盤面を用いて算定することにより「不定」となることを回避することができますが、道路高さ制限適合建築物の地盤面は無視しなければなりません。(05/12/14変更)


●地盤面が決まらない例

下図は、傾斜地を三つの地盤面で区分し道路高さ適合建築物を設計した例です。

中央の地盤面には安全側の考慮から、道路高さ制限適合建築物を設計しませんでした。
(天空率の高い道路高さ適合建築物を設計したことになります。)

この場合、中央の道路高さ適合建築物の地盤面の高さは求めることはできません。

 

計画建築物は、あえて道路高さ適合建築物を設計しなかった中央の地盤面を用いて設計しました。

この場合、中央の地盤面の天空率を算定する高さは、地盤面の高さが不定であることから算定位置も不定、測定不能となります。


●結論

上記のことからわかるように、傾斜地の道路高さ制限を天空率により緩和・適応除外する場合には

「道路高さ制限適合建築物を地盤面ごとに区分して、算定位置は道路高さ制限適合建築物の地盤ごとに面する位置を別々に求める。」(下図上段)

のではなく、

「道路高さ制限適合建築物や計画建築物を地盤面ごとに区分せず一体とし、算定位置は計画建築物の地盤面からの高さの応じた複数の算定位置が同じ位置に重なって存在する。」

とすることを推奨します。(下図下段)

(道路高さ制限のかかる範囲内全域に道路高さ適合建築物が配置されている場合は、上図上段の処理方法も可能です。05/12/14追記)

以上、傾斜地の天空率を扱う上での参考になれば幸いです。

 
 
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